薬で歯周病が治るのか?という疑問をよくいただきますが、薬で歯周病が完治することはありません。
以前のブログで説明しました、歯周病の原因は歯周病菌だからです。抗生物質により、歯周病菌は一時的に減少して、症状は良くなりますが、また時間が経つと歯周病菌が増殖して同じ状態になるからです。
ならば、ずっと抗生物質を飲み続ければ良いのですが、細菌も抗生物質が効かないように変化します。薬剤耐性菌ができてしまうのです。
日本の薬剤耐性菌の頻度は、2018年のデータで、人の大腸菌においてレボフロキサシンという抗生物質で耐性率が40.1%、セフォタキシムという抗生物質という薬で26.8%です。レボフロキサシンは2011年で耐性菌率は31%、セフォタキシムは15%で、7年間で10%上昇という極めて早いスピードで薬剤耐性菌が伝播しているのがわかります。
さらに、歯周病菌以外の無害な細菌、場合によっては人に有益な細菌まで死滅させてしまい、下痢などの副作用を引き起こします。
抗生物質の使用は悪ではありません。正しい使い方をすれば、より早く歯周病治療が進みます。
上下、全ての歯を一気に歯周病治療を行う場合は、抗生物質の服用が推奨されています。
また、心臓の弁膜疾患の方、先天性心疾患などの心臓に疾患がある方は、歯周病の治療を行うと細菌が血流にのって、心臓にたまり、そこで炎症が起きます。そのような危険性がある方は治療前に抗生物質の服用が推奨されています。
さらに、発熱や倦怠感、リンパ節の腫脹など全身症状が強く歯科治療ができない場合や、歯周治療がうまくいかない場合は、抗生物質の飲み薬が推奨されています。
中等度、重度の歯周病が原因で、歯茎にできものができた場合には、抗生物質の軟膏を入れることが推奨されています。しかし、軽度の歯周病であったり、外傷やそれ以外が原因の場合は、抗生物質の投与は推奨されていません。
まさに、抗生物質は正しい処方を受けることで、効果的に治療の目的を達成します。しかしながら、誤った使い方をしてしまうと短期的にも長期的にも不利益な結果をもたらします。
薬で簡単に治れば良いのですが、歯周病治療は地道にコツコツなのです。